松江哲明セレクションオールナイト『OLの愛汁 ラブジュース』『双子でDON』『家族ケチャップ』『ライブテープ』

松江哲明セレクションオールナイト@ポレポレ東中野
松江さんの日記はここ http://d.hatena.ne.jp/matsue/20090808



『OLの愛汁 ラブジュース』は男がよくしゃべり、よくあえぐのがおもしろい。最初の電車の中でのキスシーンが好きだ。主人公の女が仕事中にパソコン打ってるときの騒音。最後静かになるのはどういう効果狙いなのか。頭の中がすっきりしていったのだろうか。女の部屋の本棚が本が多くて性格と合ってないような。風呂場で男が女の髪を洗っているシーンが美しくて好きだ。


『双子でDON』はAV男優の花岡じったの顔が懐かしい。映像の中にいる双子はとても不思議な感じがする。


『家族ケチャップ』https://www.eigaseikatu.com/movie/video/300/。救済の物語。とてもよくわかる。鳥取砂丘に打ち立てられたプレハブみたいなリングの上に父と母と息子が立って「これが家族じゃい」。そう、フィクションをリアルだと信じて生きるのが家族だ。それが家族の虚しさであり強さでもあるわけで。つづく!!でほっとする。


『ライブテープ』まってました。元旦、初詣、吉祥寺、ギター、暖かい夕陽、閉まった店、雑踏、仲間、路地裏、井の頭公園、柔らかい夕陽、ノスタルジックな雰囲気まで漂う74分1カットの一回性に僕が俺が釘付けになる。冬の屋外でのアコギ指弾きは辛いだろうに。路地裏に入ったあとの遠くのカップルのドラマが楽しい。女は興味津々で聴きたいのに男はもういいだろみたいに手をひこうとするが女は動かない、けど二回目で女も折れてそのカップルは去っていくという。場所によって音が変わるのもまた楽しい。遠くでも音が拾えるのがすごい。あとカメラがぶれないのはどうやっているんだろう。サングラスを渡した後の背中がかっこよすぎて噴き出す。人通りの多い商店街から人気の無い狭い路地裏へ、そしてひらけた井の頭公園へという展開はまるで、内省し再び外へ向かう心の旅のようにも見えてくる。カメラの対象が前野健太のパフォーマンスから池のある公園の風景に移り、主人公が不在になり、歌がバックグラウンドミュージックになるラストはよかった。上映後のお客様たちの拍手もにはえもいわれぬ感情が込められていたように思えなくも無い。


日曜の早朝、帰宅。とても気分がよかった。

上映作品

『OLの愛汁 ラブジュース』

  監督:田尻裕司 出演:林由美香/58分/35ミリ/1999
ピンク映画史上最も優しい光と、姉貴的立場の林由美香が若いカップルを見守る90年代の日本映画を代表する名作。「山田花子の気持ちが分かる」同級生と馴染めない大学生と、「お笑い芸人の?」と真顔で答えるOLの「そこにありそうな」ラブストーリー。郊外の沿線、アパートの風呂場、そしてピンク映画…本作を見てしまったらそれらの見方が変わってしまうはず。商品化不可能のフィルム版(DVD版とは全く印象が異なる)が東中野で復活!!

『双子でDON』

 演出・構成:松江哲明/出演:山野姉妹、花岡じった/43分/ビデオ/2005
セックス終了までの行程で、双子のAV女優が何回か入れ替わったとして、男優は気づくことができるのか?かつての代々木忠平野勝之、そして松江へと受け継がれた「仕掛け」AVドキュメントの快作。哀れターゲットとなった天性のセックスマシン・花岡じったの運命や如何に?かくして双子の天真爛漫なキャラとチープな音楽によるほのぼのムードの中、実験は始まった!

『家族ケチャップ』

 監督・脚本:工藤義洋/37分/16ミリ/1992
仏壇の前で母親に小便をかけるというショッキングなシーンから始まるセルフドキュメント。しかし、映画が進む内にそれが「家族とは?」との問いから発した行動であることが分かる。だからこそリングでガウンを着た一家が熱唱する「もしも明日が…。」には号泣必至。また本作は被写体が「撮らないでくれ!」と発した時こそドラマになるという事実を証明した恐ろしい作品でもある。PFF大島渚を激賞させた学生映画の枠を超えた最強傑作。

松江哲明最新作(スニークプレビュー)』

 演出・構成:松江哲明/74分/ビデオ/2009
09年に撮影されたばかりの松江哲明最新作を特別上映。
映画と音楽の奇跡をオールナイトのラストに。
*作品セレクト/解説 松江哲明