「一月三日、木村家の人々」の家に


雪の降る寒い中、「一月三日、木村家の人々」の家に行ってきた。チラシが素敵、すごい。2009.5/25(月)19:30。駒場アゴラ劇場。

チラシは、サンプル「通過」のチラシも製作されているkyodesignworksさん。すごいなあ。http://d.hatena.ne.jp/kyodesignworks/20090521

さて、ポストパフォーマンストークのあとの質問コーナーの話から。

演出家と役者全員が舞台に座っている。よくお見かけするスレンダーなマダムが質問されたのは「役者のみなさんのお好きなお餅の食べ方」。みなさんいろいろお答えになっていて、焼いて砂糖醤油につけます、という食べ方にマダムはそんな食べ方あるんですか!とびっくりされていて何か可笑しい。ちなみに京都でも砂糖醤油です。あと、焼いたあとお湯でやわらかくしてきな粉と砂糖にまぶすとか。

演出家が「まあ今回は現代口語演劇の役者で、現代口語演劇の芝居を」といったことをトークされていたという背景があり。青年の方が「こんなところできくのはあれかもしれませんが」と前置きして「現代口語劇じゃない劇ってどんなのですか?」と。対して演出家の多田さん嬉々としていわく「はいはいたとえばですね、俳優をロープでぐるぐる巻きにして、タワーのように積み上げて、台詞をしゃべる役者にだけスポットライトをあてるみたいなのをやると、現代口語演劇じゃない演劇になります」と。対して質問者の青年の方いわく「ああ、リアルじゃないってことですね」と。おおお、あまりにもちゃんと伝わった、と思って笑ってしまった。

私が質問したのは役者と観客のコミュニケーションにかかわることで、それについては「客席も安全ではないですよ、ということ」とのこと。初日から会釈は境界線を越えていたが、名刺が超えたのは今日からだそうで、当初は役者同士が目を合わせないような演出も試みたそう。なるほど。ということで、うそとほんとにかかわるところで演出がもっと変わっていくのではと期待。そしてこのあたり現代口語演劇ではないかもしれない。

観る前は、ストレスで心がしびれていて、なおかつ、体が熱っぽくてだるかったけど、劇場をあとにする頃にはなぜか身も心も軽くなっていた。先日ユーロスペースで「buy a suite」を観たときみたいだ。ヒーリング効果とか言いたくはないけど、この芝居には何かあるのかもしれない。もう一回観に行こうかな。

劇場入って左手、向かいに客席がないエリア、の一番低いところに座る。客席と舞台の境界を溶かすようなセットが暖かくて、劇場に靴を脱いで入ったとたんほっこりする。木村家のいえにお邪魔している感じが楽しくて本気でにやにやしてしまう。始まり5分、嘘に染まる、染まりまくり、異様な哀しさに巻き込まれて涙をぐっとこらえる。けど哀しすぎて、この場から逃げ出したいような気すら起こる。ピンポンピンポンどんどんどんどんおじさーんおじさーんが好き。もうここが人の家だとしか思えなくなる。舞台を観るというより、その場に居合わせている感じで、心地よさと心地わるさを両方とも感じる不思議な居心地。役者を観ずに斜め下を見ながら場を味わうというへんなことを初めてやった。ラストはおまえら!みたいなけっこうむかつく気持ちが出てきて不思議。

しかし今思うに、あれは本当にリアルな人の家だったか? やっぱり確かめに行こうかな。

http://www.seinendan.org/jpn/info/info090326_nikinokai.html
http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_id=12104

青年団リンク 二騎の会『一月三日、木村家の人々』


熟年離婚された父親がボケた。新春の空の下、サッシにガムテープが揺れる。


『五月の桜』以来、2年ぶり待望の新作。携帯電話の割引ばかりが「家族の繋がり」を謳う今、二騎の会がお届けする、どこかの家族会議。


作:宮森さつき
北海道旭川市出身。2001年、処女作『五月の桜』が北海道戯曲コンクール大賞を受賞。続く二作目『十六夜--いざよい--』も第1回近松門左衛門賞優秀賞を受賞する。2003年青年団演出部入団後は、演出家多田淳之介とのコンビで『十六夜−いざよい−』『地球の片隅で(ライフ・レント編)』『直線』『五月の桜』を上演。


演出:多田淳之介
千葉県柏市出身。キラリンク☆カンパニー東京デスロック主宰、演出。青年団演出部所属、二騎の会では全作品の演出を担当。身体にかかる負荷によって戯曲を現前化させる演出が特徴。「演劇LOVE」を公言し、海外での創作活動や国際演劇祭のディレクター就任、富士見市民文化会館キラリ☆ふじみでの地域・教育機関へのアプローチなど、国際・地域・教育を軸に芸術活動を行う。主な演出作に『マクベス』『ロミオとジュリエット』『その人を知らず』『ドン・キホーテ』『ジャックとその主人』等。


▼出演
小河原康二 木崎友紀子 島田曜蔵 村井まどか 佐藤 誠 森内美由紀


▼スタッフ
照明:岩城 保
舞台美術:鈴木健
宣伝美術:京
制作:服部悦子 木元太郎
芸術監督:平田オリザ


会場 こまばアゴラ劇場
東京都目黒区駒場1-11-13 TEL.03-3467-2743(京王井の頭線駒場東大前」駅東口より徒歩3分)