「イントゥ・ザ・ワイルド」死ぬまで本を読む

映画館大賞第6位の「イントゥ・ザ・ワイルド」を観た。2009.5.27(水)21:05。渋谷ユーロスペース。上映前のトークショーがびっくりするくらい意味が無いので、映画が始まるまでちくま新書の「ドキュメント死刑囚」を読む。本の感想も後日書いてみたい。映画館大賞はhttp://eigakantaisho.com/で、映画の公式サイトはhttp://intothewild.jp/top.htmlで。

イントゥ・ザ・ワイルド [DVD]

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いやな予感があって今まで見なかったわけだが、残念ながらひどい代物だった。くずみたいな脚本とくずみたいな音楽の使い方とくずみたいな編集の遊び方がすべてをくずにしていく。この映画にエディ・ベダーはお似合いかもしれない。のどかな「んーんんんー♪」の曲を2回使うセンスには恐れ入る。ショーン・ペンが監督するとこうなるのか。おしりぺんぺんとか言いたくなる。

タイトル出る前の空撮のショットは圧巻。やたらカットが多い。スローモーション多い。コミカルタッチにしてみたり。画面分割で3つにしてみたり2つにしてみたり、なんかださい。MCハマーでの恋人2人がわらける。飛行機を見上げる演出はあれだが、すこし詩的だ。少女トレイシーがかわいい。そして少女トレイシーに誘わせておいて断る展開が蹴り飛ばしたくなる!けどもいいじゃないか。主人公が輝いて見えた。ヒッピー夫婦のセックス・シーンの挿入の仕方は異様。主人公の胸毛の濃さも異様。アラスカで狩る鹿が神々しい。ジブリの教育のおかげか。腐らせないよう肉の処理をするシーンは素晴らしい。もっと実際はえぐいはずだが、まあ頑張って描写した方だ。ラストのラストでひゅっと息を吸わせてカメラが回転してそのまま上空にあがっていきバス、アラスカの大自然、というのがどストレートだが悪くないし、好きかも。

総じて、アメリカの荒々しくてスケールのでかい大自然やコーン畑の耕作メカ、鹿や熊やふくろうなどの動物たちの迫力は見ごたえがあるので、映画館で見ないといけないのは事実。本当にきれいだった。しかし、主人公の行為の全体に人間としての魅力がないのが脚本としては致命的だろう。死ぬ前にトルストイの「家庭の幸福」を読ませていったいどうしたい。社会に戻りたかっただ? Happiness only real when shared だ? 死ぬまで本読んどけよ、という程度の話を148分に薄めたらこうなったんかなあ。というのが観たあとの素直な思いだが、見逃しているよさがあるかもしれないので、しばらく考えている。たとえば、人生なんて死ぬまで本を読んでるみたいなもんだ、とか? 思わせたれたとしたら、少しはしびれたかもしれないなあ。