綱渡り・蘇州の猫・とどまるか なくなるか(映画美学校セレクション2009)

ユーロスペース映画美学校セレクション2009

『綱渡り』(第3期フィクション・コース初等科修了作品)
2000年/16mm/33分
監督・脚本:小出豊
出演:浅野翔太、松橋かずき、長谷川智也、若葉要、長谷川健、桑原修、伊原勉
高崎映画祭上映
『お城が見える』『こんなに暗い夜』など話題の自主制作作品を作り続ける小出豊が、第3期フィクション・コース初等科の修了制作として監督した作品。徹底的にスタイルにこだわることで映画世界を構築しようした意欲作。

小学校の廊下の真ん中にひかれた線まで綱渡りの綱に見えてくる。線のイメージががんがん出てくるのが楽しい。車道と歩道の間の白線、糸電話、海岸線、波打ち際、引きずられたかさの跡。

最初のほう、玄関の扉が開いて外の光が隙間から家の中に射し込むのが美しい。美しいから3回繰り返したんじゃないかと思っている。

ラストかっこよすぎる。

『蘇州の猫』(第3期フィクション・コース高等科実習作品)
2001年/16mm/33分
監督・脚本:内田雅章
出演:黄金井直子、アッサム、川田希、山本尚明、樹杉東篤、松嶋真、安井豊
カンヌ映画祭シネフォンダシオン部門正式招待作品
第3期フィクション・コース高等科の実習作品として制作された作品。何気なく見つけた手紙をきっかけに、1999年と2001年、2つの時代が交錯する恋愛物語。この壮大な物語を締めくくるラストシーンの描写は秀逸。

中盤、「蘇州夜曲」が流れて二人がダンスするシーン、歌の歴史的背景が示されるというか使われるんだけど、実際の銃殺刑の記録映像を使う必要性はあるのか。しかも1回じゃなく2回入ってたはず。しかも過去の歴史をしっかり見せます!ではなく映像部品の一部として挿入されていて、つまり人が殺されている映像がイメージ映像にされているように思われたわけなんだけど。実は、ちゃんと見せたかった映像なのだろうか? 主人公の女の就職先が素敵とか言いたいけど、銃殺刑の記録映像が気になる。あれはどうなんだ。

『とどまるか なくなるか』(第5期フィクション・コース初等科修了作品)
2002年/DV/36分
監督・脚本・編集:瀬田なつき
出演:嶺野あいか、洞口依子桐本琢也、半田美保子、鳥澤奈央、清水沙映、小川尊、山口博之
東京藝大大学院の修了制作『彼方からの手紙』が高い評価を得た瀬田なつき映画美学校初等科時代の作品。些細な出来事の連続が平凡な家族を思わぬ方向へと導く。そんな状況に翻弄されながらも、自分なりに生きていく一人の少女の成長が力強い演出で描かれる。

よかった。こういう経験をするために映画を観ている。少女やその女友達たちのその年代らしいありふれた振る舞いが充満したどうでもいい日常から、家族の中で出来事が起こるにつれ、その出来事と関係あるような無いような格好で、徐々に少女が自律しつつ自壊していくような変容がすごい。そしてまたもや少女ダンスがよかった。顔つきが変わっていくのが楽しい。