『築地五丁目』『あおぞら』(映画美学校セレクション2009)

『築地五丁目』(08年度ドキュメンタリー・コース初等科修了作品)

2008年/DV/36分
監督:五十嵐恭子
撮影:佐々木ちはる/録音:木邨千尋スクリプト:保田則子/スチール:三野新
移転計画がある築地市場。説明的な要素を排除し、その内部を探検するかのように映し出すキャメラは、巨大な迷宮に飲み込まれそうな印象すら与える。「繰り返される日常を写真を操るようにスクリーンで再現」することを目指した意欲作

http://www.eurospace.co.jp/detail.html?no=218

自動化しているかのような日常の繰り返し感を淡々とした雰囲気でみせるドキュメンタリー。"Our Daily Bread"(ドキュメンタリー/2005年/独)*1と少し似ている。魚の血、死にかけの魚、が観れたのが嬉しい。カメラの視線を魚の視線に見立てるような低い位置。カメラを運搬車の荷台に載せるなーと思ったらやっぱり載せた。横向きに運ばれて行く受動的なカメラの視線は何か楽しい。寝てしまってラスト見逃した。ところで、築地市場の全体という素材を選択した意図がいまいち伝わってこないけど、寝た自分が悪いのだろうか。


『あおぞら』(01年度ドキュメンタリー・コース研究科作品)

2001年/ βカム/53分
監督:加瀬澤充
AZコンテスト準グランプリ受賞
園舎も園庭もない幼稚園「あおぞら」。この幼稚園に1年間通いつめたキャメラが発見したものは…。当時のドキュメンタリー・コースの主任講師佐藤真との長い対話を通して、加瀬澤充監督が完成させたドキュメンタリーの力作。

http://www.eurospace.co.jp/detail.html?no=218


これはよかった。子供大好き。前半、テントウムシをめぐるけんかは、先生のやり方がフェアじゃないと思うが、一人で強いやつに対して何故か殴りに行った第三者なあいつはフェアじゃないのに対する抗議をしてたのでは。後半、自閉症児とそのお母さんが中心となる。やはり自分の母親とかぶるのもあって全力で肯定したい気分にかられる。あの母親会での話し合いの長いカットはよかったなあ。話し合いというか出てくる言葉が重いというか、本気の言葉ばっかりというか。やや誘導的に過ぎるかもしれないけど、母親の表情から、水道で遊ぶ自閉症児への切り戻しもなんか普通な感じがいい。


このドキュメンタリーの魅力は、もちろん、「あおぞら」の教育観、幼稚園児の生の輝きのまぶしさ、自閉症児をもつお母さんやまわりのお母さんたちの成長などにある。でも実は、その背景で、広々としてきれいな祖師谷公園*2の魅力がずっと効いているように思える。自閉症児が水道で遊ぶ背景で、公園管理局側のスコップをもった作業員が土ならしをする仕事がずっと入っているのを余計だとは思わない。実は、役者の演技とか? まさかね。


      • -

*1:誰かがとっくに言ってるとは思うけど、"Our Daily Bread"の邦題「いのちの食べかた」は森達也の著作にひっかけただけで、映画の内容とずれている。

*2:あの公園は『ある光』(監督:高橋明大)のと同じじゃないだろうか。公園が同じ、というかもっと言うと、団地が背景で手前にベンチエリアでさらに手前が草むらで子供が遊ぶという画が同じじゃないかな。