buy a suite スーツを買う:飛ばされそう

5/17(日)。サスペリア・テルザ観て、ユーロスペースまで行って、映画「オカルト」のパンフレットを入手して(中原昌也の曲が聴きたかった)、21時まで時間があったので何かとの出会いを求めて渋谷をぶらつく。というかぶらつくと決めた時点でだいたい方向性なんか決まっちゃっているもんだ。東急百貨店を越えてよく行く映画館uplinkも超えてずんずん行ってみようと思っていたのだった。渋谷駅から15分くらいかな。これくらい離れると渋谷区とはいえかなり静かだ。このあたりは神山町というらしい。そしてちゃんと出会えるんだね。とてもスタイリッシュでお洒落だがちゃんとつぼをおさえた品揃えの本屋に出会えた。SHIBUYA PUBLISHING BOOK SELLERS http://www.shibuyabooks.net/。そんで結局買おうか悩んで買わなかったのは森山大道の「新宿」という結末。広がらない趣味よ広がれ。


ユーロスペースで「buy a suite スーツを買う」をレイトショーで。劇場入ると映画の主題歌と思わしき、とても落ち着く曲が流れている。幸せな気分に浸る日曜の夜。このままここで眠りたいと思った。


しっかりとしたストーリーがあるのが意外。ユーモアのセンスがすばらしい。楽しくてずっと笑ってしまった。関西人(えせ関西弁ではなく完璧な関西弁を話す)が東京でしゃべっているのが楽しい。3人が飲んでるシーンもけっこう可笑しいけけど、気を緩めると薄くて弱いところから涙があふれてこぼれそうになる。東京に来たひとの気持ちがわかる、ということが東京に来てよかったことの一つだと思う。buy a suiteで写し撮られる東京は、東京で生活している人々がよく知っている、よく知っているがゆえにもはや目に入らなくなっている背景としての東京だ。と言えるかもしれない。そして私はこの東京をこよなく愛している。と言えるかもしれないな。そして関西弁のキャラクターたちが尚いっそう背景としての東京を通して関西/京都/過去への郷愁をかきたてる。と言えてしまうような気がする。ここにきては涙も出ようというものだ。しかし自分をかぶせすぎかもしれない。それでもとにかく変な涙が出るというあの気分からしばらく離れたくないんだからしょーがない。

昨年59歳で無くなった市川準監督のことはよく知らなかったけど、wikipediaで調べたら「演出家として禁煙パイポタンスにゴン金鳥)、エバラ焼肉のたれ、ヤクルトタフマンデューダ等の、個性的なテレビCMを作り話題を呼ぶ」とのことで、なんとまあ身近な存在だったわけだ。ユーモアのセンスにも納得。併映された「Tokyoレンダリング詩集」は少し眠りながら観た。撮影場所が東京のどこなのかを考えるのが楽しい。品川プリンスの入り口とかあったなあ。ところで、横にいらっしゃった方は映画監督の犬童一心さんではなかったろうか。

そして帰り道では1ヶ月ほど前にETV特集鶴見俊輔が語っていた有限性の中の永遠の話を考えた。渋谷駅へ向かう帰り道、こころがとても軽くなっていて飛んでしまいそうだった。いい映画だった。本当にいい映画だったなあ。