キェシロフスキ「トリコロール/白の愛」振り回されて、映画の外に放り出されてしまった
振り回されて、完全に映画の外に放り出されてしまった。こらえきれず吹き出してしまった。しかもクライマックスの大切そうなシーンで。隣の席に、独りなのにぶつぶつつっこみを入れる青年をへんなひとーーとか思ってたら、同じところで同じように吹き出した。なんとまさかの同類だったとは。そのときの自分の感情はリアルなんだけど、何か後悔した。
トリコロール/白の愛(1994),TROIS COULEURS: BLANC,92分,フランス/ポーランド
性的不能から妻に去られた男が、やがて金持ちになって、妻に奇妙な復讐をするまでを描く。
- 出版社/メーカー: ショウゲート
- 発売日: 2005/11/25
- メディア: DVD
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たしかに映画の展開がリアルじゃないのはたしかだ。笑っちゃう。でもだったらなんで映画を観ているのかという話で。自分のリアリティにしがみついてどうする、意地でも映画にしがみつこうよ、と、この映画が終わって2時間後に思ったのだった。だから振り回されたんじゃなくて、知らない乗り物に乗るのに、勝手に乗り方を決め付けて、うまく乗れなくて加速したときにほっぽり出されたにすぎない、と言うべきだ。というか、そう言いたいんだ。
- 観てるときは、白いイメージの連鎖、重なり、過剰さ、というのを楽しめていない、というかそういう仕掛けに気付いてすらいないという。三部作のほかの作品(「赤の愛」か「青の愛)を先に見ていればよかったかも、と三部作を全部観た今なら思う
- 裁判所のシーンで、「公平はどこにある!」のあとに扉を開けて中をのぞく女性が唐突だったので、公平を背負ったキャラクターか?とか思ったけど、そうじゃなくて、これは「青の愛」で出てくる女だったわけだ、と三部作を全部観た今ならわかる
- DVDのパッケージにもなっている去っていく妻のバイバイの仕方が可愛い
- 唐突な騎乗位におっ!となる
- 老人が難儀しつつびんをゴミ箱に捨てるのを見て主人公の絶望的な男がにやにやするのは何だ?と思って観てたけど、これは赤・青でも繰り返されるシーンなのだ、と三部作を全部観た今なら知っている
- 彫刻と妻のイメージの重なりとか、今思い出して考えてみると面白いけど、観てるときに気付けてないのが情けない、視覚に素直にならんとなあ、と三部作を観ながら思った、そのきっかけの作品と言っておこう、そういう意味では最初につまづけてよかったのかもね