重力ピエロ:ひどい。フィッシュストーリーと間違えてた

品川プリンスシネマのレイトショーは最高。20時以降1200円で、しかも超ゆったりプレミアスクリーンが開放されている場合もある。

人気作家・伊坂幸太郎直木賞候補になった同名ベストセラーを映画化。大学院で遺伝子の研究をする兄の泉水と、自分がピカソの生まれ変わりだと思っている弟の春。2人は、仙台の街で起こる連続放火事件と、現場近くに必ず残されるグラフィティアートの関連性に気付き、事件の謎解きに乗り出すが、そのことで 24年前から今へと繋がる家族の謎が明らかになっていく。監督は「Laundry」の森淳一。泉水役に加瀬亮、春役は岡田将生



重力ピエロは原作読んでないので知らない。重い苦難のなかにおいても軽やかに笑って生きることが可能かを問うた作品!風のミステリー、といったところか。とりあえずこれは映画で勝負しておらず、人気の原作があって、無難に映画化しときゃ金落としにくんじゃね、といったたぐい。


でも好きなシーンはある。ベタに2階からのジャンプとか。そして特別大好きなのは子供時代の2段ベッドでの兄弟の会話。弟の質問に対して、変な声でファンタグレイプと繰り返し唱えたお兄ちゃんが大好きだ。ここのやりとりをテキストで味わうためだけに原作を読んでもいいと思うくらい大好きだ。その次に大好きなのはピエロが落ちないか本気で心配している弟。お兄ちゃんも弟もほんとに優しいね。


それにしてもひどい出来。絵や音楽の使い方がつまんないのはいいとしても、演出・演技がひどい。弟のファン女子(吉高由里子)はよかった。兄役(加瀬亮)は可もなく不可もなくだからまあいいとして、弟役(岡田将生)と悪いやつ役(渡部篤郎)はやる気がないのでまあいいとして、父役(小日向文世)はいつ見ても同じなのでまあどうでもいいとして、何なんだろうなあ、役者というより演出の問題じゃないか。「アヒルと鴨のコインロッカー」は悪くなかったけどなあ。ああああああああ。いまとんでもない勘違いをしていたことに気付いた。「アヒルと鴨のコインロッカー」と同じスタッフが作ったと記憶していたので安心して観にいったんだけど、それは勘違いで、同じスタッフが作ったのは「フィッシュストーリー」だった。やれやれ。


びっくりしてしまったのが、お母さんが妊娠していることに気付いて、お父さんが勝手に覚悟を決めるのはいいとして、その歩き去っていくシーン。二人の背中の上に、なんと教会の十字架!を見せてきた。こんな表現がありなのか。十字架てあんた。


でもせっかくの話題作?知らんけど、なので、この映画というか物語に対して生真面目な批判を言ってみると、ちゃんと狂気を描かないとだめじゃん、ってことになるけど、どうもそういうレベルじゃないんだろうなあ。別の角度から当てこすりに行ってみるか。映画を観終わったあと、この物語を作ったとき作家は20代前半だっただろうと思った。しかし予想外なことに、調べてみたら1971年生まれの井坂幸太郎が「重力ピエロ」を上梓したのは2003年だ。うーん。とするとやっぱり32才が作ったとは思えないので、ミステリーにおまけがついているだけ、という理解で問題ないのか。そしておまけの中にはファンタグレイプや、ピエロが落ちないか心配する弟、みたいな輝く瞬間もあると。


エンディングの曲、おぼえやすくてやさしい曲で聴きやすいけど、あざとい。19才でこんな歌作ってどうする。

Sometimes

Sometimes


これは、30歳のおっさんが歳の話ばっかりする日記です。