土本典昭『海とお月さまたち』『水俣病 その30年』、『大いなる幻影(Le Grande Illusion)』『無防備都市(Open City)』

京橋のフィルムセンター行ったあと渋谷シネマヴェーラ行ってきた。ある映画館の受付ガールとお話させてもらえて光栄でございました。


日本橋のお客さんとこで夕方仕事があるときは、帰りに京橋のフィルムセンターに一駅で行けるのが嬉しい。土本典昭(1928-2008)のドキュメンタリーが観たかったので、この特集に一回は来たかった。水俣病を取り扱った作品がたくさんある。

海とお月さまたち

(50分・16mm・カラー)→32分に変更


水俣」シリーズのスピンアウトとして製作された児童向けの中篇。不知火海の変わらぬ豊穣さを示し、作品中に「水俣」の語は一切使われない。魚にもタコにも、それらを捕獲する人間と同じ尊厳を感じさせる撮り方が印象的。


’80(日本記録映画研究所)(監)土本典昭、西山正啓、原博徳、浅田康爾(撮)瀬川順一、一之瀬正史、柳田義和、江原正雄(録)赤坂修一(編)川岸喜美枝(音)松村禎三(解)大宮悌二

上映会情報京橋映画小劇場 No.14 ドキュメンタリー作家 土本典昭


魚も生き生きしているし、そんな魚を釣って食べる人間も生き生きしている。魚の生と、人間の生が、対等に提示されるのがいい。しかもむちゃくちゃ楽しい。海、月、九州、やたら楽しげで朗らかな音楽、イカの産卵、魚釣りの名人!のおじいさんのシワシワだけど名人ぽい手のアップ、イカに似せたルアーつくり、質問しまくる子供「なんで着物を着せるの?」「なんでだと思う」ある子供答えて小さい声でいわく「似せるため」おじいさん正解!とも言わずマイペースに説明、イカに捕獲される小エビ、ふぐ、ふぐ釣り、たこつぼ、たこ釣り、子供が魚をぺたぺた触る! 子供が魚をしゃこしゃこ触る!、でかい鯛、おじいさんは矛を持ちおばあさんは船を漕ぐ、イカを生きたまま餌にして鯛を釣る(「イカのあまり痛くなさそうなところに針を刺します」)、失敗するとなんとも無残な姿になる「(鯛ではなく)カワハギが足をうどんのように食べてしまいました」、釣れた鯛のアップ、イカの孵化、「この海で生きて死んでいくイカの赤ちゃんが今生まれました」、ラスト、夜空に浮かぶ満月、海に浮かぶイカ

水俣病 その30年

(43分・16mm・カラー)


湾の埋め立てが始まり水俣病の「風化」の兆候が見えてくる中、未認定患者の多さや裁判闘争の困難さなど、病が発見されて30年経っても残る「影」の部分を見据えた作品。当初は「海は死なず」という大作が計画されていた。


’87(青林舎=シグロ)(監)土本典昭(撮)清水良雄(録)岡本光司(音)高橋鮎生(解)伊藤惣一

上映会情報京橋映画小劇場 No.14 ドキュメンタリー作家 土本典昭


人間の感情がくっきりと、とげとげしくなく伝わってくる。「怨」の文字がでかでかと掲げられた旗。株主総会でおばあさんの叫ぶ声。水銀のメタリックなキラキラした輝き。ちゃんと歩けない犬。目が見えない猫。飛べないカラス。「病気ではなく傷害事件だ」。「水俣病を考えてほしい」。


馬鹿みたいにたくさん走っている車にひかれて死ぬくらい人間は弱いので、テクノロジーの発達で必ず傷ついてしまう。その弱さを誰が気にしてやるのか。そして傷ついたあとどう気にしてやれるのか。土本典昭の仕事を、水俣病という特殊な問題から離さずしかし開いていくように継承していけるといいな。


ちなみに、さんざん補償金を支払ってきたチッソ株式会社の「水俣病問題への取り組みについて」のページは今はこんな感じ。
https://www.chisso.co.jp/topics/minamata/index.html

大いなる幻影(Le Grande Illusion)

公開:1937年(111分)
監督:ジャン・ルノワール
主演:ジャン・ギャバン、ピエール・フレネー、エリッヒ・フォン・シュトロハイム、ディタ・バーロ、マルセル・ダリオ
第一次大戦下のドイツで捕虜となったフランス軍兵士たちの、収容所からの脱出を巡る物語。同じ貴族階級出身であるフランス人大尉と収容所所長との友情と葛藤、脱走兵と彼らをかくまったドイツ人母子との暖かい交流など、単なる戦争映画を超えた人間と社会についての深い洞察に富んだ、名匠ルノワールによる人間交響楽。

英語字幕。途中入場で、ドイツ人母子にかくまってもらうあたりから見た。こいつら絶対できちゃうだろと思ったらキスしやがった。ドイツ人未亡人にフランス語をしゃべらせるというでれでれ演出。女の子供Lotteが遠慮してるけど子供らしく元気がよいので楽しい。Lotteでてきたらのびのびしだした。

無防備都市(Open City)

公開:1945年(106分)
監督:ロベルト・ロッセリーニ
主演:アルド・ファウリーツィ、アンナ・マニャーニ
第二次大戦末期、ドイツ軍占領下のローマでは、抵抗運動の闘士・マンフレディを匿った印刷工・フランチェスコが逮捕され、後を追った婚約者までも射殺される。やがてマンフレディもゲシュタポに捕らえられ、拷問の末に惨殺される。解放直後のローマで撮影され、リアリズムに徹した描写が世界に衝撃を与えた、ロッセリーニのネオ・リアリスモの傑作。

きた、なんだこれ、こんな映画初めてだ。音楽が派手で、扉がぱたんぱたんして、テンションの高い映画。


冒頭、男が屋上から出てきて扉がパタン、でバイオリン(かな?)ぎゅいんぎゅいんの音楽は急すぎる。警察(かな?)がアパートに来て扉がパタン。神父がレフェリーをする子供のサッカーシーンが楽しい。女優が楽屋に入ってくるところで扉がパタン。着替えるためスカートあげようとした瞬間でカット。

母に遣われて、神父と話しにきたときに子供がやけにしっかり話すのでへんだなと思ってたら、きっちりレジスタンスの徒党を組んでたよびっくり。しかも、子供レジスタンスの登場シーンの最初の爆発音から煙もわもわは異様。この点に限らず人の死に方とかいろいろと異様。ラスト、椅子の画が綺麗なんだよなあ。エンディング曲が明るい曲で微かにしか悲壮感がなく、またショックをうける。ゆさぶられまくった。


もっと書きたいことがあるけど眠くて仕方ないので中断