イジー・バルタ『屋根裏のポムネンカ(Na p〓d〓 aneb Kdo m〓 dneska narozeniny)』『イジー・バルタ短篇集 Bプロ』


ユーロスペース、自分の中だけのイジー・バルタ二本立て。


『ポムネンカ』は無理やり長編にしたんじゃないか。辛かった。けど、やはり短篇集がすばらしい。バルタ作品を観ていると時間が異常に長く感じられる。AプロもBプロも最高だったが今日が最終日。またやるでしょう。『見捨てられたクラブ』はげらげら笑ってしまった。それにしてもバルタがすごいのはアニメ素材を扱う手つきに愛がある点だなあ。そして子供の空想と大人の分別がいい具合にバランスがとれている。ガラクタフェチはびんびん出てるけど少女と猫も大好きなんだろう。アニメの流れに実写映像(ねこ!とか、少女!とか)が挿入された瞬間の楽しみと驚きはいったい何なのか。あー楽しかった。


バルタのおかげで、初めてアニメーションって何だっけって考えた。とりあえずanima(霊魂、とか訳す)を語源とするwikipediaの説明を採用して、animationとは「命のない動かないものに命を与えて動かすこと」だとしたら、ポムネンカは主題も手法もともにanimationということになるだろう。そしてバルタ作品のちゃんとカクカクした有様には、素材たちに命が吹き込まれたときの輝きが満ちているように思える。そうしてみると、逆に、複数のコンテクストをまたぐことが生きているということなのかもしれない、か。『ポムネンカ』では火がぱちぱち燃える描写が素敵だったな。ポムネンカちゃんの声が結構しっかりした大人の声なのはフィクションとしての上品さだと思う。


それにしても、バルタの上映のとき女性客が多いのは微妙。たしかに「かわいい」で消費することも可能なんだけど。男もマッチョにアニメ見よーぜ。

屋根裏のポムネンカ(Na p〓d〓 aneb Kdo m〓 dneska narozeniny)

監督:イジー・バルタ
2009年/チェコ、スロヴァキア、日本/75分/35㎜/アメリカンビスタ


シーツの波をかきわけて タンスの崖をよじ登り クッションの雲を越えて、
キミに会いにいく。

芸術の国チェコで、65年ものあいだ親しまれてきた人形アニメーション
待望の最新作は、屋根裏にこっそり住んでいる“ガラクタ”たちのフシギな世界!

http://www.eurospace.co.jp/detail.html?no=216



ジー・バルタ短篇集 Bプログラム(6作/計79分)

『謎かけと飴玉』
1978年/8分
飴玉をもらうためには謎かけに答えなければいけない。レリーフ(半立体)を使ったデビュー作。

『プロジェクト』
1981年/6分
団地の図面が広げられ、製図の上に、様々な家庭が描かれた紙が貼り込まれていく。実写のコマ撮りのテンポがユニーク。

『手袋の失われた世界』
1982年/17分
スプラスティック・コメディから、『ゴジラ』や『未知との遭遇』まで、映画の歴史を手袋たちがパロディとして演じる。

『最後の盗み』
1987年/21分
ある屋敷に盗みに入った泥棒が、不思議な人々に親切にされる。実写のフィルムおよそ5万枚に直接彩色し、幻想的な映像を生み出している。

『見捨てられたクラブ』
1989年/25分
古いマネキンが置き捨てられた物置に、ある日新しいタイプのマネキン達が運び込まれる。新しいスタイルの人形アニメーション

『セルフポートレート
1988年/2分
ジー・バルタ、パヴェル・コウツキー、ヤン・シュヴァンクマイエルのセルフポートレートの見にオムニバス。

http://www.eurospace.co.jp/detail.html?no=220